B.B.キング@〜 BBからのメッセージ


2007年1月10日未明、夢の中に突然B.B.キングが現れた。
BBの夢を見たのはこれで2回目だ。
夢の中のBBは50歳ぐらいで、場所は日本のアリーナだった。
中央に大きなステージが設けられ、そこでBBがルシールを抱えて
全身全霊でパフォーマンスを行い、
その様子を私が天井から眺めているという設定である。
BBのエネルギッシュな演奏と観客との素晴らしいコール&レスポンスに、
私も喜んで拍手したが、ふと会場を見渡せば空席ばかり。
でもBBは、落ち込んだ様子もなく、
魂から涌き出る感情をそのままギターに注ぎ込んでいる。

そして次の瞬間、現在の年齢とほぼ同じぐらいのBBが登場して、
お付きの人に支えられながらやっとの思いで椅子から立ち上がり、
舞台の上でスピーチをするという場面にすり変わった。
顔は生気がなく、身体もだるそうだ。
私はBBの沈んだ表情を見て急に不安になり、
「BB、大丈夫かな?」と思った途端、夢から覚めた。

その後、家事をしていてもBBのことが気になり、
オフィシャル・サイトを開いて安否を確認したが、
これと言って特別なニュースも出ていなかったので、
ひとまずホッとしてパソコンの前を離れた。

「そういえばあれから3年になるわ・・・」と
BBと握手を交わした時のことを回想しながら、
彼の温かく穏やかな雰囲気に包まれている自分を想像した。
すると次第に、「今回の夢はBBからのメッセージにちがいない。」
と強く思うようになったのである。

BBは私にとってパーソナルな存在かもしれない。
初めてBBと会った時、なぜか懐かしくて仕方なかった。
人種も違うし、言葉もあまり通じない。
でも心の中で、お互い何かが共鳴するのを感じた。

あの時の感動を思い起こしていたら、
再会したいという欲求が
とめどもなく心の底からあふれてきた。
「もう一度、もう一度、BBに会いたい。
場所はメリルヴィルのスター・プラザがいい。
あそこだったらセキュリティも厳しくないから写真も撮れるし、
楽屋に入ることだって可能だ。」
そんなことを本気で考え始めている自分にハッとして、
急いで首を左右に振った。

しかし、どんなに熱くなった心に冷水を浴びせても、
それとは裏腹に「会いたい」という気持ちが強くなっていく。
それは、恋人に対して抱く想いではなく、
もっと大きな存在、
例えば「サムシング・グレート」のような
偉大なものに対して自然と湧きあがる畏敬の念を伴った感情である。

いてもたってもいられず、BBのスケジュールを調べてみたが、
4月分はまだアップされていなかったので、
シカゴ在住のギタリスト、
菊田俊介さんだったらご存知かもしれないと思って、
早速メールをお出しした。
そうしたら、、BBが4月7日、インディアナ州のメリルヴィルで
再びライヴを行うことを教えてくださったのである。

「もしかしたらココ・テイラーもジョイントするかもしれない。
予定がわかり次第連絡します。」というお返事だったので、
「今回もスター・プラザでBBに会える。菊田さんのギターも聴ける。
3年前に見た夢がまた実現するんだ!」と期待に胸を膨らませ、
すでに現在完了形でシカゴ行きを考えている自分がそこにいた。

そのうちBBのスケジュールが更新され、
メリルヴィルに来る直前の4月5・6日、
シカゴの「ハウス・オブ・ブルース」に出演することがわかり、
「せっかくBBに会う目的でシカゴまで行くのだから
ハウス・オブ・ブルースにも行こう」と一人で思いを巡らした。

ただ、このライヴ・ハウスはセキュリティが厳しく、
場内にカメラや録音機材を持ち込むことが堅く禁んじられている。
楽屋へ行ってBBと言葉を交わし、握手をするなんて到底無理。
でも、もし菊田さんがスター・プラザに出演されない場合は
私だけBBと会いたい一心で、メリルヴィルに行くことはできないと思い、
それを踏まえた上で以下のようなメールを菊田さんにお出しした。
「今回BBはシカゴのハウス・オブ・ブルースにも出演するので
まずそちらを見に行きます。
それでもし、菊田さんがスター・プラザに出演されない時は、
私もスター・プラザには行きません。」

数日後、菊田さんからメールがあり、
あいにく同じ日、ココ・テイラーが
ニューヨークのB.B.King's Blues Clubに出演することが決まり、
BBとスター・プラザでジョイントしないことが判明した。
私はその知らせを聞いてとてもがっかりしたが、
「BBと直接会いたいという欲張りな思いは捨てて、
ハウス・オブ・ブルースに行こう。
BBの元気な姿を見れるだけで充分ではないか。」と気持ちを切り替えた。

そして頭の中でスケジュールを組み立て、
「4月5日は息子の入学式のため、
どうしてもその日は日本にいなければならない。
でも翌日の昼に日本を発てば、6日の午前中にシカゴに到着するから
その夜はハウス・オブ・ブルースでBBのライヴを堪能できる。
これを逃せば、もう二度とBBに会えないかもしれない。
急な話だけど、家族に相談してみよう。」
と何かに導かれるかのように計画を立てた。

ある時お母さん友達から、
「シカゴって片道、11時間かかるんでしょ?
何でそんなに簡単に行こうって思えるの?」と質問されたことがある。
確かにその通りだ。
一人身ならまだしも私には12歳と10歳の子供がいる。
「その子供を置いてよく海外なんかに行けるよね・・・」
と友人は半ば呆れた気分で言ったにちがいない。
私も、自分のことを本当に自分勝手な母親だと思う。

でも、今回も家族は私の身勝手な行動を許してくれた。
主人や両親も私の気持ちを理解してくれて
「行っておいで」と言ってくれるので、こんなにありがたい
ことはないと心から感謝している。 

特に大変なのは子供の面倒を見なくてはいけない私の母親だ。
その母も、「もう幼児じゃないから大丈夫よ。」と賛同してくれる。
母の妹である叔母も
「人生は一度しかないし、
海外は感性が若いうちに行った方がいい。
子供が巣立つのを待っていたら、後悔するわよ。」
と後押ししてくれた。

難なく行かせてもらえることになり、
すぐにライヴ・チケットを取って飛行機とホテルを予約する。
今回はシドニー在住の叔母が同行してくれることになり、
初めての叔母との二人旅に心が弾んだ。
「BBとまた握手できたらいいな」という微かな期待を胸に秘めながら・・・。


<07・7・15>