エルヴィスとの出会い


ブルースなどの黒人音楽を聴くようになったのは20歳の時。
そしてエルヴィスとの出会いは21歳の時でした。
ある日、1970年のラス・ヴェガスでのショーを映画化した
「エルヴィス・オン・ステージ」を偶然母がテレビで見つけて、
懐かしそうに観ていたのです。
私がその日学校が休みで、その部屋にたまたま入って行かなければ、
現在、エルヴィスの音楽をこんなに熱心に聴いていたかはわかりません。
もうすでに番組は始まっていて、私が観た時は、
「去りし君へのバラード」を歌っている場面でした。

まず最初の印象は、「温かみのある素敵な声!」です。
あの見慣れない派手な衣装には驚きましたが、そういうものは気にならないほどの
歌唱力と声質、そして優しい笑顔に心を奪われました。
そして聴いていくうちに、
「この人は白人なのに、どうして黒人のフィーリングで歌を歌えるのだろう?」
抑揚の付け方、魂の込め方、間のとり方、重厚感に黒人音楽を感じました。
思いっきり、それでいて自然に、感情のおもむくまま歌いあげるその姿は、
恵まれたルックスと共にひときわ輝いていたのです。

「明日に架ける橋」を歌うエルヴィスに、あの時どんなに感動したかわかりません。
こんなに心を込めて、歌うことができる人がいるのだ・・・
エルヴィスのこの歌一曲だけでも、
慰められ、支えられる人がいても おかしくない・・・

「名前は聞いた事があったけど、この人はいったいどんな人?」

彼の奥深い魅力に初めて接した瞬間でした。