『ワンダー・オブ・ユー』〜愛こそすべて


エルヴィスが1970年代のショーの中で歌った曲の中に
『THE WONDER OF YOU』がある。
これは私にとって70年代・お気に入りの曲ベスト10に入るものだ。
エルヴィスの70年代曲集から「愛の三部作」を選べと言われたら、
迷わずこの『THE WONDER OF YOU』と『LET IT BE ME』
『BRIDGE OVER TROUBLED WATER/明日に架ける橋』
を選ぶだろう。
これらの曲の主人公は全て男性である。
『LET IT BE ME』で運命的な出会いをし、
『THE WONDER OF YOU』で与えてくれる愛の素晴らしさに驚嘆し、
『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』で無償の愛を施すのだと
私自身勝手に解釈している。

『THE WONDER OF YOU』にスポットを当てた場合、
まずこの曲を作ったベイカー・ナイト(Baker Knight)
情感こまやかな詩的センスに感服する。
エルヴィスはこの曲に込められている男のロマンチシズムを
ハートフルかつ重厚感あふれる声で表現し、
聴衆の心に崇高な愛の存在を強くアピールした。
ひとたびエルヴィスが愛を語れば、聴いている女性は
それらの言葉は全て自分のためにあるのだという錯覚に浸ることができる。
エルヴィス自身、愛がどんなものであるかを知っているからこそ
それをリアルに表現できるのだろう。

私が今まで聴いてきた曲の中でラヴ・ソングとして心に残る曲は
そのほとんどが男性が作ったものである。
全てとはいわないが、男性が綴った詩はロマンチックで繊細である。
文章に関してもそうだ。
芸術の分野において男性が発揮する才能、
すなわちナイーヴかつ幻想的で想像力に富んだ感性に
私は今までどれだけ憧れの念を抱き続けてきたことだろう。
女性は生来子供を産んで育てるという役割を持っているため、
物事を現実的に捉えやすい。
だから男性の方が表現という意味において、
女性よりも自由で豊かな発想を持っていると考えられる。

『THE WONDER OF YOU』の歌詞の中でハッとさせられた言葉は
「君が僕の手に触れると 僕の心は王様になる」という一節だ。
何とも微笑ましい表現だが、
女性にはこういった発想はなかなか出てこない。
これは、
「愛に満ちた君の温もりを感じていれば
僕は何でもできるし怖いものは何もないよ」
という意味にとることができる。
他に、男性はどんなものを女性に求めているのか知りたくなり、
三人の友人にそれぞれ
「精神的に女性に求めるものは何ですか」
という質問をさせていただいた。

Aさんからは
「その女性の持ってる一番自分が惹かれてる部分をより追求したい。
『気高さ』と『優しさ』、すぐ頭に浮かぶのはこの二つかな。」
という回答をいただき、
Bさんからは
「内側から美しさが溢れるような女性」
「清楚な感じのする女性」
「派手な印象を受ける女性は苦手で、地味でありながら
ほどよいセンスが感じられる女性が理想です。」
というお返事をいただいた。
Cさんは
「女性の魅力は『気立ての良さ』と『笑顔』にある。」
と自信たっぷりに答えてくださった。
皆さん、真摯に回答してくださり改めてお礼を申し上げたい。

友人たちが語ってくださった理想の女性像は
『THE WONDER OF YOU』の歌詞の中に出てくる女性の雰囲気と
どこか共通点がある。
「自分のことを心から愛してくれる女性」とはどなたもおっしゃっていないが、
それが大前提になっていることは間違いないだろう。
私はこの歌を繰り返し聴いているうちに
愛の力の素晴らしさ、そこから生まれる喜びや讃美、向上心といった
プラスの想念をはっきりと認識することができた。

人間にとって一番大切なものは何であるかと問われたら
「それは愛である」と答えたい。
誰でも自分のことを優しく思いやり、支えてくれる人を欲しているはずだ。
愛は「人類愛」「男女の愛」「親子愛」「家族愛」「師弟愛」など
いろいろな形でこの世に存在する。
それぞれのかかわりにおいて相互に愛が育まれ、
それが見返りを要求しない本物の愛であるならば
それは必ず「永遠の愛」「至上の愛」になりうるだろう。
奇跡を起こすことも可能かもしれない。

しかし、全ての人間が愛を手に入れられるわけではない。
愛は命と同様お金で買うことができないのである。
愛を知らないまま人生を終えてしまう人もたくさんいる。
「愛は幻」だと考えている人も多々いるだろう。
そうした人々に真実の愛を体験した人がその本質を語れば、
愛を知らない人々に勇気や希望を与えることができる。
反対に愛を失った人がその悲しみを語る時、
その時の辛さ、せつなさを知るものは共感を持って耳を傾けるだろう。
だからこそ、愛をテーマにした曲は次から次へと生まれ、
人々の心を捉えてやまないのだ。


『THE WONDER OF YOU』
  
  words & music by Baker Knight
   recorded by Ray Peterson (1959)
   also recorded by Elvis Presley (1970)


When no-one else can understand me
When everything I do is wrong           
You give me hope and consolation
You give me strength to carry on
And you're always there to lend a hand
In everything I do
That's the wonder
The wonder of you

And when you smile the world is brighter
You touch my hand and I'm a king
Your kiss to me is worth a fortune
Your love for me is everything
I'll guess I'll never know the reason why
You love me like you do
That's the wonder
The wonder of you

I'll guess I'll never know the reason why
You love me like you do
That's the wonder
The wonder of you


誰一人 僕を理解してくれないとき
何もかもが うまくいかないとき
君は 希望と慰めを与えてくれる
君は いつも僕のそばにいて
どんなときにも 優しく手を差し伸べてくれる
それは君の愛の奇跡 君の愛の奇跡

君が微笑むと 世界中が輝き
君が僕の手に触れると 僕の心は王様になる
君の口づけは 尊い宝物
君の愛こそ 僕のすべて
何故なのかは 永遠の謎だけど
君は 僕をこんなに愛してくれている
それは君の愛の奇跡 君の愛の奇跡

何故なのかは 永遠の謎だけど
君は 僕をこんなに愛してくれている
それは君の愛の奇跡 君の愛の奇跡

<05・9・12>